「ウエルシュ菌は人や動物の腸管、土壌、水中など自然界に広く分布する。食品では、特に食肉(牛、豚、鶏肉など)の汚染が高い。この細菌は熱に強い芽胞を作るため、高温でも死滅せず、生き残る。したがって、食品を大釜などで大量に加熱調理すると、他の細菌が死滅してもウエルシュ菌の耐熱性の芽胞は生き残る。食品の中心部は酸素の無い状態になり、嫌気性菌のウエルシュ菌にとって好ましい状態になるため、食品の温度が発育に適した温度まで下がると発芽して急速に増殖を始める。食品の中で大量に増殖したウエルシュ菌が食べ物とともに胃を通過し、小腸内で増殖して、菌が芽胞型に移行する際にエンテロトキシン(毒素)が産生され、その毒素の作用で下痢などの症状が起きる。一度に大量の食事を調理する給食施設などで発生することから“給食病”の異名もある。カレー、シチュー、スープ、麺つゆなどが食べる日の前日に大量に加熱調理され、大きな器のまま室温で放冷されていた事例が多く見られる。『加熱済食品は安心』という考えがウエルシュ菌による食中毒の発生原因となっている。逆に、家庭での発生は他に比べて少ないことが特徴的である。」