『頭部外傷後、通常1~2カ月かけて、頭蓋骨の下にある硬膜(脳と脊髄を覆う膜の一つ)と脳の間にじわじわと血液がたまって血腫ができる病気です。血腫が大きくなり脳を圧迫することで、頭痛、物忘れ、認知症によく似た症状(意欲の低下、性格の変化、反応の低下など)、歩きにくさ、片方の手足に力が入らないなどさまざまな症状をきたします。高齢者に多くみられ、人口10万人あたり年間1~2人程度が発症するとされています。
脳の片側に血腫が形成されることがほとんどですが、約10%の頻度で両側に形成されることがあります。軽い頭部外傷(打撲など)が原因とされていますが、外傷歴がはっきりとしない場合もあり、酔った状態で転んだ、ドアに軽く頭をぶつけたなど本人が覚えていない場合もあります。
診断は頭部CT、MRI検査にて行ないます。
血腫が小さい場合は自然に治癒することもありますが、極めてまれです。通常は外科的治療が必要となります。
外科的治療の基本は穿頭ドレナージ術です。これは比較的短時間で終了する手術法で、まず、局所麻酔下に頭の皮膚を3cmくらい切開して頭蓋骨に1cmほどの穴を開け、細い管(ドレーン)を入れて血腫を洗浄します。その後、管を入れたまま傷を閉じ、およそ1日、そのままの状態で残った血腫を流出させた後に、管を抜去します。この手術を行なうことで症状が改善し、術後約1週間で退院可能となることが多いです。ただし、10%程度に術後の再発がみられ、血腫が再び増大した場合には再度手術を行なう必要があります。血液をさらさらにする薬(抗凝固薬、抗血小板薬)を飲んでいる人は一般的に再発しやすいとされています。』
『たまった血液によってできた血腫は次第に大きくなり脳を圧迫するため、認知症に似た症状が現れるのが特徴。急性の硬膜下血腫とは異なり、脳に損傷はほとんどない。基本的には適切に治療を受ければ完治する病気のため、「治る認知症」の一つとして知られている。』